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Type:
novel
どうしたって戻れない過去を振り返り、無益なことと知りつつも、
あの時もし、と仮定しては、あり得たかもしれない今を空想し、現実の先に待ち構える未来と空想の先に辿り着いた未来を比較して、その暗澹たる差異に打ちのめされる。そう、
例えば、あの時、
あの、芽吹き出した下生えの草の青草さが絡み付く雨の帳に閉ざされた灰色の世界で、
傘も差さず、ただぼんやりと、けれどどことなく真剣に、神父さんの名前が刻まれた冷たい石の十字架を見詰めていた兄さんの、
その、きっと芯まで冷え切ってさぞ冷たくなっていたであろう、手を、
ぎゅっと握って、踵を返し、あの場から逃げ出していたら、
騎士団から逃げ果せて、兄さんを守ることが出来たのだろうか、なんて、
そんなことを考える雪男と、燐の、
短いようで長く、長いようで短い、そんな逃避行。
めくるめく、めちゃく茶会
LalKa
ノベルティDL
レモンの融解点
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